機関誌「ミドリ」について


2017ミドリ107号「葛葉緑地で地質学にふれる」その1

ミドリ107号
2017年冬号


ミドリ107号

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生命の星・地球博物館 学芸員
笠間 友博
 

写真1:雪景色の葛葉緑地

1.葛葉緑地の地形-段丘崖の緑-

 葛葉緑地は、葛葉川が刻む渓谷斜面沿いの緑地です(写真1)。 この斜面は段丘崖と呼ばれる侵食地形で、周囲の住宅地が広がる平らな台地は扇状地性の河岸段丘です(図1)。 台地の上は開発が進んでいますが、段丘崖は土地利用がしづらいため、開発から逃れている所が多く、貴重な自然環境を私たちに伝えています。 葛葉緑地もそのような段丘崖に残された貴重な自然環境のひとつです。

 

図1:葛葉緑地の地形地質概念図

2.葛葉川の流路と地殻変動

 葛葉川は丹沢山地から流れ出し、葛葉緑地のある秦野盆地を南東方向に流れ、水無川などと合流し、金目川となります。
 秦野盆地の南側には大磯丘陵という高まりがありますが、金目川は大磯丘陵を東へ迂回するように流れ、鈴川、渋田川などと合流して花水川となり、相模湾に注ぎます。 大磯丘陵は世界的に見ても隆起速度の速い場所として知られ、今は丘陵ですが、海に覆われていた痕跡や箱根火山や丹沢山地から川が流れ込んでいた痕跡が地層に残されています。 その中で興味深いのは、昔の金目川の痕跡が地形として残っている点です。 秦野と二宮を結ぶ重要な交通路は大磯丘陵を横切る南北方向の直線的な谷の中にありますが、この谷は数万年前の金目川が侵食してつくった地形と考えられています。 大磯丘陵が隆起したため、金目川は迂回して流れるようになったのです(図2)。
 なお、葛葉緑地の葛葉川は蛇行して流れています。 段丘崖は蛇行と並行していることから、蛇行した状態が初めにあり、蛇行に沿って下方に侵食が進み、渓谷となったことが分かります。 蛇行の原因は新九沢橋付近にある断層による隆起運動によって下流部が隆起し、河川勾配が緩やかになったためと考えられています。

 

図2:金目川の流路概念図

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2017ミドリ107号「葛葉緑地で地質学にふれる」その1

目次
①その1 葛葉緑地の地形-段丘崖の緑-
その2 現地案内
その3  関東ローム層

ミドリ107号
2017年冬号


ミドリ107号

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表紙:ターン・ハウズ湖

表紙:ヤマユリ

自然への一歩 冬から春へ 池のにぎわい
阿木 二郎   手塚 真理
葛葉緑地で地質学にふれる
生命の星・地球博物館 学芸員 笠間 友博
光るミミズって見たことある?
~葛葉緑地はいろいろな生き物に出会えるよ~
自然観察施設・くずはの家 所長 高橋 孝洋
葛葉緑地 アクセスMAP
緑の募金
平成29年度
緑化運動・育樹運動コンクール受賞作品
緑の募金 緑の募金による活動報告
一里塚・
四方山話3⃣
「ムササビ」
神奈川県森林インストラクター 滝澤 洋子
事務局だより ●小網代の森
 アカテガニ放仔観察会2017
●感謝状贈呈、主催イベント ほか
ヤマユリ自生地
再生チャレンジ始動
久田緑地での
取組事業
製材体験イベント